2000.07.03:平成12年第3回定例会

◯36番(黒子秀勇樹)登壇 私は公明党福岡市議団を代表いたしまして、LD児及びADHD児に対する相談、診断及び教育支援の充実についてお伺いいたします。関係当局の誠意ある明快な答弁を期待いたします。
 LDとは、Learning Disabilities の略で学習障害といい、全般的な知的発達におくれはないものの、ある特定の能力、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する等の習得と使用等に著しい困難を示す障害をいいます。また、ADHDとはAttention Deficit Hyperactivity Disorderの略で、注意欠陥、多動性障害といい、落ち着きがなく、物事に集中できず、行動の自己調整や対人関係の問題を伴う障害をいいます。両者とも通常学級で過ごすには周りの理解と協力が必要であり、特殊学級に通うほどの障害でもない状態です。一説では、エジソンやアインシュタインもLDだと言われております。漫画ドラえもんの登場人物、のび太とジャインアンはADHDだと言われています。2人ともちゃんと学校に通っているし、みんなと遊んでいる。特別な存在ではありませんが、宿題ができない、忘れ物をよくする、落ち着きがない、空想癖がある等の特徴が見られます。アメリカでは1968年にLDの定義が確立され、1975年から公的な特別な支援が開始されました。今では就学児の1割を超える子供たちが支援を受けています。その約半数、200 万人がLDと呼ばれる子供たちです。それに対し、日本では1995年に文部省がLDの定義を定めただけで、まだ公的教育支援が確立していません。というのも、日本では重度障害児に力が入り過ぎて、LDの子供たちはその障害の程度が軽いためになかなか理解してもらえませんでした。LDなど軽度の発達障害がある子供たちに光を当ててこなかったことが指摘されています。それが学級崩壊や不登校、いじめなどの背景にもさまざまな形で見え隠れしています。全国LD親の会の山田裕康会長によると、不登校の約3割がLD児であると述べていますし、専門家の中にLD児の90%がいじめに遭っているという報告もあります。それらの問題はどこかで勉強ができないことが絡んでいますし、LDなどの発達障害の子供が関係している場合もあるようです。
 例えば、昨年の文部省委託調査の中間報告で学級崩壊の原因と思われるものを挙げていますが、学習障害にも関係する項目が多く見られます。落ち着きがない、集団生活の中で対人関係がうまくいかない、無器用など、LDの子供の特徴を見ることができます。ある新聞に次のような記事がありました。「ある福岡市立中学に通う2年の女子生徒の母親は、娘に大学院生の家庭教師をつけた。週に2回、娘が苦手な数学などを教えてもらっている。この母親は、娘が中学に入学した昨春、担任にLDであることを告げた。だが、担任はLDという言葉さえ知らなかった。それでも学校側がLD児と認識し、特別な指導に取り組んでくれることを期待したが、対応は他の生徒とほとんど同じ。娘はゆっくり、じっくり教えてもらえれば、習得できる力はあるのだが、どんどん進む授業、娘にとって時間のむだだと嘆く。また、教育行政の鈍い動きに親たちは不安を募らせる一方だ。LDの問題は、学習のつまづきだけではないからである。昨年の暮れ、福岡市近郊に住むLD児の小学4年生男子の自宅の郵便受けに、子供の字で「アホ」などと書かれた紙切れが入っていた。母親は、息子は強いショックを受けていた。障害への理解がないために周囲からいじめられて不登校になるのが一番心配と表情を曇らせる。ある福岡市立小学校に通う6年男子の母親も、息子は劣等感を持ち、友達と一緒に遊ぼうとしないと声を落とす。」以上のような記事でありました。
 本市においても、このような子供たちの中には、担任から障害を正しく理解されないために、自信や意欲が低下したり、情緒が不安定になったり、集団不適応を起こし、いじめや不登校に陥っているケースがあります。また、担任はこのような子供たちをLD児かどうか判断できずに困惑していたり、どのように指導してよいのかわからずに1人悶々と悩んだりしています。さらに、保護者の中には、担任から子供が怠けている、家庭のしつけが悪い、子供がわがままであるといったように、一方的に悪者扱いにされ、学校不信や担任不信に陥ってしまっている母親がいます。そこで教育長にお尋ねしますが、本市における学習に困難を示す子供の実態について、どのように把握されているのかお聞かせください。また、LD児及びその周辺児に対する教育支援の現状と、教職員及び保護者に対する理解啓発のための研修など、取り組みの現状についてお示しください。ある医療機関の追跡調査によると、1,500 グラム未満で生まれた未熟児のうち、約29%がLD群に入り、問題行動がやや多い中間群には29%が入るそうです。つまり極低出生体重児の半数以上がLD児及びその周辺児になる可能性を示唆しております。医学の進歩により、未熟児の生存率は格段に高くなっています。このことは、LD児の発生率も高くなっている可能性を示しています。乳幼児健診でLD等の発達障害児が早期に発見されるようフォロー体制の充実を図るべきであります。本市における乳幼児健診の現状とLD等の疑いのある児童への対応についてお示しください。また、学習障害は、その原因として中枢神経に何らかの機能障害があると推定されていますが、LD等の疑いのある児童について、保健所、児童相談所及び心身障害福祉センターにおける相談、診断体制についてお示しください。
 以上で1問目を終わり、2問目以降は自席にて行います。

◯副議長(叶 忠信) 西教育長。

◯教育長(西 憲一郎) 学習障害児等に関する御質問にお答えいたします。
 学習障害児等につきましては、基本的には知的発達のおくれがなく、さまざまな状態を示すため、個人や家庭のしつけの問題等と誤ってとらえられ、障害が発見しにくいことから取り組みがおくれている現状にあります。お尋ねの実態把握につきましては、文部省の調査研究協力者会議の最終報告が昨年7月になされたばかりで、全国的な調査や統計はございません。本市でも調査を行っておりませんので、全市的な把握はできておりませんが、平成11年度の発達教育センターの来所相談によると、来談者は395 名でございまして、そのうち学習障害、あるいはその疑いがあると判断された児童、生徒の人数は30名ございまして、その内訳は小学生が22名、中学生が8名となっております。
 次に、学習障害児等に対する教育支援につきましては、学習障害児等が在籍する学校において、担任が授業に当たって指導内容、方法を工夫するとともに、放課後等に児童、生徒への個別の指導を行っております。さらに、不適応状態から情緒障害を起こした学習障害児等には、小学校2校、中学校2校に設置しております情緒障害通級指導教室において、情緒面での課題を中心として個別や小集団で専門的な指導を行っております。
 次に、教職員及び保護者に対する理解啓発のための研修につきましては、教職員を対象とした校内研修会に発達教育センター指導主事を講師として派遣したり、教職員及び保護者や市民を対象とした研修講座や講演会を実施しております。また、発達教育センターにおいて、教員が週1回非常勤研修員として学習障害児等の指導内容、方法についての調査研究を行っております。以上でございます。

◯副議長(叶 忠信) 木山保健福祉局長。

◯保健福祉局長(木山光蔵) 乳幼児健診やLD児に対する対応の御質問でございますが、乳幼児健診のうち、1歳6カ月児と3歳児健診は、幼児の精神発達の上から重要な時期であり、問診や診察の結果、より専門的な検査が必要な場合には、引き続き保健所において、心理判定員による精神精密検診を実施をいたしております。その結果、LD等の疑いのある児童は、心身障害福祉センター等への受診を指導いたしております。児童相談所では、保護者等からの相談に対応し、心理判定員による各種の発達検査を行うとともに、家庭での日常生活や学校での状況を聴取し、LD診断を行っております。診断後は、保護者や学校に対し、症状や対応についての助言を行っておりますが、必要に応じて、発達教育センターや心身障害福祉センター等の紹介を行っております。
 心身障害福祉センターでは、保健所や児童相談所から紹介を受けた児童について、相談、検査を行い、その結果、LD等と診断された場合は、外来療育の中で指導、訓練及び保護者の助言、心理的サポートを行っております。以上でございます。

◯副議長(叶 忠信) 黒子秀勇樹議員。

◯36番(黒子秀勇樹) さまざま答弁ありましたけれども、LD及びその周辺児を持った担任の先生が問題意識を持って取り組んでいるのが実態で、万全のバックアップ体制というのはこれからだというふうに思いますが、そのような中で、LD児及びその周辺児の保護者の方々は、情報交換をしながら悩みを共有し、励まし合っています。私は、過日先進的に取り組んでいる千葉市立検見川小学校を視察してまいりました。検見川小学校では、個別指導と通常学級に対するチーム・ティーチングを実施していました。また、東村山市立久米川小学校では、通級による個別指導とグループ指導による組み合わせを、横浜市立綱島東小学校では通級による保護者同席の個別指導を実施していました。個別指導終了後、同席のお母さんに感想を聞いてみますと、どうすれば子供たちのいいところを引き出すことができるのか、先生の指導を見ながら理解できるようになったという声が返ってきました。子供たちも個別指導が楽しいと言っているそうです。両校とも学習障害を子供たちの特性、個性として温かく受け入れておりました。
 20世紀に最も大きな影響を与えた理論物理学者のアルバート・アインシュタインは、2歳になるまで言葉を発しませんでした。周りの大人たちは赤ん坊に何か先天的な欠陥があって発育が阻まれているのだろうと将来を悲観したそうです。やがて、彼が話し始めるようになり、小学校では優秀な成績をおさめたので、その憂いはなくなりますが、少年のアインシュタインは、学校という場所が好きになれなかったようです。少年の慰めは、ユークリッド幾何学の書物を開いて1人で問題を解くことでした。数学などの好きな教科は熱心に学んで優秀な成績を残すけれども、関心のない教科はやっと及第する程度しかやらない。アインシュタインもまた周りになじめない風変わりな子供だったのです。大学を卒業しても就職できずに学術誌に自分の考えを投稿するようになります。26歳のときに発表した論文は、まず物理学の世界で注目され、やがて世界の思想界を席巻しました。これがニュートン以来、最大の発見と言われた相対性理論です。彼のしていることは、子供のころに1人で数学の問題を解いて遊んでいたのと変わりありませんでした。違ったのは周りの方だったのです。生まれてから四半世紀を経て、人々はようやくアインシュタインの偉大なる知性と才能に気がついたのです。
 1995年の国立特殊教育総合研究所の調査によると、算数と国語のいずれかが当該学年より2学年以上のおくれがある児童は、5年生で9.5 %、6年生で9.1 %おります。この中の何人かはLD児の可能性があります。LDの子供たちは、日常生活において普通の子供と余り違わないので、努力が足りない、もっと頑張りなさいなどと不当に言われ続けてきたのではないでしょうか。近視でぼんやりとしか見えない子供に頑張って見なさいとは言いません。近視に必要なのは努力ではなく、視力に合った眼鏡なのです。LDも努力ではなく工夫が必要なのです。なんで計算ができないの、頑張りなさい、という言葉では何の解決にもなりません。どういうタイプのLDか、勉強面ではどういう工夫をしたらいいのか、どういうことでこの子は苦しんでいるのかということが理解できれば、A君はこういうふうにやればわかる子だ、Bちゃんはこういうふうに何回かやってあげるとうまく伝わるんだとなるはずです。LD児及びその周辺児を包み育てる教育ができれば、あらゆる通常学級の生徒の個性を開花させることが可能と考えます。本市が早急に取り組むべき課題として、1、LD等に関する啓発、特に父母、教員等の研修、2、相談、診断体制の充実、3、専門家による巡回指導、4、教育現場での通級、個別指導、チーム・ティーチングなどの充実などを図るべきであると思いますが、御所見をお伺いします。
 東村山市では、就学児童は市の教育委員会で、就学前児童は社会福祉協議会で相談及び診断ができる体制になっております。障害に対する気づきは早いにこしたことはありません。何か気づいたり、不安があれば、信頼できる専門家や医師に相談することも大切です。本市においても、発達教育センター並びに児童相談所や心身障害福祉センターで、LD専門の職員による発育、発達障害や療育指導などの相談、診断体制をしくなど、LDに関する専門的医療機関や教育機関と密接な連携、協力を深めるとともに、診断や指導のあり方を工夫しながら、障害の早期発見、早期療育に努め、学習障害等の発達障害に関する施策の充実を図るべきであると思いますが、お考えをお聞かせください。また、1歳6カ月健診及び3歳児健診を受診していない場合、父母の障害認知がおくれてしまうといった危惧も考えられます。乳幼児健診については、LD等の発達障害児が早期に発見されるよう、乳幼児全員が受診することと発達スクリーニング検査の充実をすべきだと思います。特に、多動傾向のLDサスペクト児等を早期に発見すれば、回復の可能性につながると思います。御所見をお伺いいたします。
 以上で2問目を終わります。

◯副議長(叶 忠信) 西教育長。

◯教育長(西 憲一郎) まず、本市が取り組むべき課題につきましては、まず教職員が学習障害児、LD児等の特性を十分理解することであると考えております。学習障害児等の理解があって初めてその実態を把握することができ、適切な教育的支援を行うことが可能となると考えられます。そのために、発達教育センターにおいて、学習障害児等の理解啓発のため、管理職を含めた教職員や保護者に対する研修を実施しておりますが、今後、これをさらに充実させるよう努めてまいります。また、相談、診断、指導体制等につきましても、県の学習障害、LD児の指導のあり方の調査研究に取り組んでいる本市協力校の成果等を踏まえながら、今後十分に検討してまいりたいと考えております。
 次に、関係機関の連携、協力につきましては、発達教育センターでは、心身障害福祉センター、児童相談所等と連携しながら保護者の教育相談に応じております。また、障害のある児童、生徒を対象とした就学に関する相談会においては、心身障害福祉センターや児童相談所の職員を委員として委嘱し、お互いに連携、協力しながら学習障害児等に関する情報の交換を行い、障害の的確な把握に努めております。今後とも学習障害児等への教育的対応や効果的な指導を図るため、関係機関と連携、協力を深めてまいりたいと考えております。以上でございます。

◯副議長(叶 忠信) 木山保健福祉局長。

◯保健福祉局長(木山光蔵) LD児の相談、診断体制、あるいは関係機関の連携についての御質問でございますが、LD等の疑いのある就学前児童の相談、診断につきましては、児童相談所におきまして、各種発達検査や診断を行う心理判定員、医学診断のための嘱託の児童精神科医を配置をいたしております。また、心身障害福祉センターにおきましては、保健所、医療機関等と連携をしながら、相談、検査を実施する社会福祉職、心理職及び医師を配置をいたしております。さらに、LD等と診断された児童に指導、訓練を行うために言語聴覚士、作業療法士などを置き、具体的な療育指導を行っております。また、児童が就学する際には、心身障害福祉センターから発達教育センターに紹介し、学校教育における配慮等について連携を図っております。今後とも相談体制の充実のため、診断、療育技術の向上に努めるとともに、障害の早期発見、早期療育に資するよう、より一層の連携、協力を図ってまいります。
 次に、乳幼児健診の受診率についてでございますが、未受診者につきましては、各保健所において、受診勧奨のはがきの送付や保健婦の家庭訪問を行い、受診を勧めているところでございます。その結果、1歳6カ月児健診は90.6%、3歳児健診は86.8%の受診率となっておりますが、今後も対象者全員が漏れなく受診されるよう努力してまいります。また、発達スクリーニング検査、すなわち精神精密検診につきましては、現在知的発達や言葉のおくれの見られる幼児を中心に実施しておりますが、今後よりきめ細かに対応できるよう充実に努めてまいります。以上でございます。

◯副議長(叶 忠信) 黒子秀勇樹議員。

◯36番(黒子秀勇樹) 子供の発達には、周りの大人の接し方が大きく影響をします。学習障害等のある子供には特別な援助や配慮が大切でありますので、学習障害児等の特性を十分に理解をして、可能性を信じて大きくはぐくんでいただきたいことを強く求めておきたいと思います。
 3問目は山崎市長にお伺いしますけども、病気の場合は病院で治療がしてもらえます。障害の認定を受けた障害児は専門の施設で指導、相談を受ける機会があります。しかし健常児と障害児の中間、すなわち軽度発達障害児の枠に入る児童は、通常ハンディを持った子供が受けられるサービスを受けられなかったのです。LDに限らず、すべての子供たちが形式的平等にこだわることなく、個人のニーズに合った教育を受けられるようにすべきだと思います。何でもできる万能な子供に育てるのではなく、あなたにはこんなにいいところがあるとか、君のここのところはすばらしいなといった育て方が大切ではないでしょうか。みんなそれぞれ違っていい、違うなりに必要な援助を与えればいいという考え方が浸透すれば、LDという言葉も必要なくなると思います。通常学級におけるLD児及びその周辺児への通級による指導と、通常学級の中の援助教育は、学習困難への直接的対応だけではなく、これらの子供と深く関係する不登校、いじめ、校内外暴力等、我が国及び本市の学校教育が直面している諸問題の解決にもつながるものであります。社会全体によるLDへの取り組みは真の個性の時代をスタートさせる重要なかぎになるように思えてなりません。最後に山崎市長の御見解をお伺いして、質問を終わります。

◯副議長(叶 忠信) 山崎市長。

◯市長(山崎広太郎) 私どもも子供の親として、ハンディなしで子供が生まれてくる、あるいは育っていくということはなかなか難しいということを体験として理解しているわけで、子供たちはそれぞれ個性があると同時に、いろんなハンディを背負っているんではないかと、このように思います。アインシュタインが学習障害児だったとすれば、本当にこれは大変な社会的な財産であるわけでございまして、そうした普通の通常児と違った状況の子供というのはたくさんいると思いますので、少しずつそのゆとりの教育とかいろいろ言う時代でございますので、もう少しきめ細かにというか、ゆとりを持って対応していって、そしてそれが個々的にそういう対応ができることが即効果にあらわれることのようでございますので、ぜひそういう対応をすることによって、議員御指摘のように、それがひいてはさまざまな子供が抱える問題の解決につながっていくと、御指摘のとおりだと思いますので、そういう個性の時代に沿った教育、あるいは地域での取り組み、こういうことを行っていきたいと、このように思います。