五足の靴

博多区中洲に川丈(かわじょう)という旅館があります。

川丈旅館は、明治時代から営業している旅館で、「川端」の「丈七」という人が作ったので「川丈」という屋号になったようです。

 

川丈旅館の入り口には「五足の靴」を記念した文学碑が立っています。

碑には与謝野鉄幹、北原白秋、吉井勇、木下杢太郎、平野万里の文豪5人の名が記されています。

 

明治40年7月28日、東京を出発した与謝野鉄幹はじめとする「五人づれ」の一行は、7月31日九州に入り、第一夜を過ごしたのが川丈旅館でした。

当時の川丈旅館は、旅館の他に、落語や講談、浪曲、漫才、義太夫などの講演をする寄席も併設されていたということです。

 

「五人づれ」は、当時の旅人としては珍しく靴を履いていたようで「五足の靴」というタイトルでその旅の模様が描かれています。

「五足の靴」には、――中島(中州)の「川丈」という旅館に泊まった。旅館と、温泉宿と、寄席と、氷店と、水上花火を装置した納涼店とを兼ねた家だ。川に臨んだ二階の戸を開け放したままで寝かせてくれた。――と書かれています。

 

川丈旅館に一泊した五人は、北原白秋の故郷である柳川に向かい、唐津、佐世保、平戸をめぐり、長崎から船で天草にわたり、阿蘇まで足を伸ばしています。

 

「五人づれ」はそれぞれ、この旅の後に我が国の近代文学を代表する詩人、歌人となっています。

 

小さい頃、新しい靴を買ってもらえるのは、どこか旅行に出かける時が多かったように思います。

知らない街に新しい靴を履いて出かける・・・それだけでなぜかワクワクしたことを覚えています。

大人になった今でも、新しい靴を履いて“少年の心で知らない街を旅してみたい”という気持ちは残っているようです。